X線が拓く 2012 6 24

書名 X線が拓く科学の世界
著者 平山 令明  サイエンス・アイ新書

「粘着テープでX線が発生する」
 X線というと、たいていの人が、
健康診断の胸部レントゲンを連想するでしょうか。
あるいは、空港での手荷物検査でしょうか。
 ところで、そういうX線をどうやって発生させるか。
それには、いろいろな方法がありますが、
わかりやすい方法を書くとすれば、こういう方法です。
 その前に、原子の構造を書く必要があります。
ここでは、量子力学ではなく、古典力学で書きます。
 まず、陽子と中性子で構成される原子核があって、
その周りに、まるで太陽系のような電子軌道が複数あると思ってください。
 この複数ある電子軌道は、外側に行くに従って、
K殻、L殻、M殻・・・・・と名前がついています。
(実際の軌道は、惑星のような単純な軌道ではありません。
s軌道、p軌道、sp混成軌道など、複雑な形になります)
 X線を発生させる時に使うのは、L殻かM殻までですので、
さらに外側の電子軌道は省略します。
この電子軌道は、外側に行くほど、エネルギーが高くなります。
 さて、加速させた電子を、K殻にある電子に衝突させると、どうなるか。
K殻にある電子は、軌道から突き出されてしまいます。
空席となったK殻には、L殻にある電子が移動します。
つまり、空席を埋めることになります。
 ところが、電子軌道は、外側に行くほど、
エネルギー量が大きくなりますので、
外側にあった電子が、内側のK殻に移動すると、
エネルギーが余ることになります。
 そこで、この余剰となったエネルギーを放出することになります。
これが、X線となります(特性X線)。
 話が長くなりました。
おろらく、多くの人は、
「X線の一般的な仕組みは、わかったから、
早く、粘着テープのX線について書いてくれ。
その仕組みが知りたい」と思ったでしょう。
 実は、なぜ、粘着テープで、X線が発生するのか、わからないのです。
粘着テープの話は、この本に詳しく書いてありますが、
実に不思議なことです。
 昔から、暗室で、勢いよく粘着テープをはがすと、
光が出ることは、よく知られていたそうです。
 しかし、X線については、驚きです。
これは、カリフォルニア大学の研究者が、科学雑誌「ネイチャー」に発表したそうです。
真空中で、粘着テープを1秒間に3cmの速度で、はがすと、X線が発生するというのです。
 実に、不思議ですね。
境界面での滑りや摩擦が、X線の発生に関係しているのでしょうか。
 そうなると、地震のことも連想します。
日本列島は、太平洋プレートが、大陸プレートの下にもぐりこんでいるから、
地震が多いと、よく聞きます。
そうすると、やはり、境界面での滑りや摩擦が、電磁波を発生させるでしょう。
 さて、私は、もうひとつ連想しました。
金属面をひたすら滑らかに、そして平らに磨くと、どうなるか。
そして、その金属同士をくっつけた時、滑らかに、摩擦が少なく動くようになるか。
 実は、滑らかに動くどころか、
接着剤を使わないのに、金属同士が、ぴったりと、くっついてしまうのです。
 こうした金属同士を、真空中で、高速で、引き剥がすと、どうなるか。
やはり、電磁波が発生するのでしょうか。
境界面での滑りや摩擦で、何が起こるのか、気になります。
(実験装置がないので、思考実験するしかない)
 さて、粘着テープでX線が発生するから、被曝するのか、
そういう不安を持った人がいるかもしれません。
 しかし、これは、真空中でしか観測できないほどの微弱なものなので、
心配する必要はありません。
 学校での科学教育は、なかなか難しいものがありますが、
「粘着テープでX線」という話のように、
最初に興味を引き付けておいて、
その後に仕組みを話すという方式は、どうでしょうか。











































































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